せっかく新しい社員を採用したのに、そのまま放って置きっ放しの会社が多いのではないでしょうか。

 

たしかに、電話の受け応え方やパソコンの入力方法については丁寧に教えますが、そんなことよりも今日が初出勤の新入社員が一番不安に思う瞬間は、最初の昼食のときです。

 

出社初日の新入社員は、右も左も分かりません。お弁当を持参すればよいのか、外食だったらどこで食べるのか、だれもそんなことなど事前には教えてくれません。

正午。

案の定、新入社員は目が泳ぎ出してうろたえます。「お昼はどうするのですか?」とは、なかなか訊けません。

 

そんなとき、私の顧問先の営業部に籍を置くある課長は、見事にフォローしています。彼は、うろたえる新入社員を目にすると必ず食事に誘います。とんかつ、そば、カレーライスのうち1つを選択させるとお店へと向かいます。

 

2時間ほど食事をしながら目の前の若者の緊張をほぐすと、仕事の内容や社員一人一人のクセなどを面白く語ります。そして、会計をする際は、あえて領収書はもらいません。そのとき新入社員は、決まって課長のすぐ後ろにピタッと立っているからです。もらいたくてももらえないのです。。。

 

それから数年が経ち、当時の新入社員だった何人かが去りました。課長は、最後も必ず一緒に食事をします。そのとき最初に食べた、とんかつ、そば、カレーライスの話題にいつもなるそうです。

 

大げさですが「一生忘れません」と言う者もいたそうです。みんな決まって数年前の“最初の食事”の話を昨日のことのように笑顔で話します。彼らは、鮮明に覚えています。新入社員は、アヒルのように最初にやさしくしてくれた人のことを、いつまでも忘れることはありません。

だから課長は、新入社員が初出勤するその日だけは、スケジュールを入れずに“最初のアヒル”となりました。これが2日目でもダメです。

困っているのは初日です。

どうでもいい些細なことのように思えますが、だれも気に留めない些細なことだからこそ、困っている相手の心には深く残るものなのです。